この記事では「内定が無く(新卒を維持するために)大学院に進学することはありなのか?」という悩みに答えていきます。
結論として、就職活動のために大学院に進学することは意味がなく、お金の無駄になるケースが多々あります。
コロナによる就職状況の悪化から、大学4年時に企業からの内定が貰えず悩んでいる方がたくさんいます。
既卒の状態で就職浪人をすると不利になり、多くの方が「何とか新卒扱いでもう1度就職活動ができないか?」と希望します。
新卒の権利を維持するための一つの方法が「大学院への進学」です。
しかし、新卒扱いにはなるものの次の就職活動で上手く行く可能性は低く、学費等のお金が無駄になる可能性が高いです。
この記事では、内定が無いという理由で大学院に進学しても就職活動が上手く行かない5つの理由を紹介しています。
(私はリーマン直撃世代のため、リーマンの時の周囲の就活状況の話が参考になると思います)
- 内定が無いという理由で大学院にいっても就活は上手きません
- 1. 修士課程の同期の中で明らかに研究が進んでいない
- 2. 就活に失敗した根本的な原因が解決していない
- 3. 就職状況が良くなっている保証はない
- 4. 大学院へ行っても就活に有利にはならない
- 5.自分が変わらなければ次の就活も上手くいかない
- 研究目的ではない大学進学は、はっきりお金の無駄
- まとめ:あなたが行くべき場所は大学院ではなく、就職課だ
この記事の執筆者
私は過去に化学系の大学院博士課程に進学した経験があります。
在学中は、日本学生支援機構の学費免除や学術論文への投稿など精力的に活動をしてきたつもりです。
また、博士課程3年時に中退し1年間の自分探しの時間を過ごし、27歳での既卒就活を行い28歳で正社員になることができました。
このような経験から、私のブログ「平太の雑談ブログ」では「大学院生活」と「既卒就活」をテーマにした記事を発信しています。
(その他、様々なテーマで日々記事を更新しています)
内定が無いという理由で大学院にいっても就活は上手きません
大学4年時に内定が貰えず、新卒を維持するために大学院へ進学する方は一定数います。
私はリーマンショック世代で就職状況の悪化から、私の大学でも内定が無いことを理由に大学院へ進学する人はたくさんいました。
ただ、大学院へ進学しても次の就職活動で上手く行くとは限りません。
残念なことに、2年後も内定が無いという事態になる可能性は非常に高いです。
(同級生、先輩とそういう方はいました)
内定が無いという理由で大学院に進学した人が、次の就職活動が上手く行かない理由は5つあります。
- 修士課程に進学する同期の中で明らかに研究が進んでいない
- 就活に失敗した根本的な原因が解決していない (問題の先送り)
- 2年後に就職状況が良くなっている可能性は無い
- 大学院に行っても就職活動に有利にならない
- 自分が変わらないとダメ
それぞれ下記で詳細に解説していきます。
1. 修士課程の同期の中で明らかに研究が進んでいない
学部4年時に就職活動をしていた人は、当初から「大学院に進学する」と決めている同期と比べて研究をしてきた時間が圧倒的に少ないです。
内定が無いということは、大学4年の多くを就職活動に使っていると思います。
大学4年の多くの時間を研究室で過ごしている同期と比べ、研究成果や専門的知識など全てにおいて確実に劣っています。
そんな状態で大学院に進学して2回目の就職活動を再開しても上手くいくでしょうか?
研究をしていないことが前提の学部4年生と違い、大学院生は研究をしていることが前提です。
周りの方と比べ、「大学院生なのに研究してないな」と思われるのはどうしても避けることができません。
「大学院へ行くと専門性を高められて有利になる」という話をネット記事で見ることができます。
ただ、この有利になる人は最初から大学院に進学することを決めている方限定の話なのは忘れてはいけません。
1.1 修士課程用の研究テーマを貰えていない
学部生で卒業する方と最初から修士まで進学する方の研究テーマは重さが違う可能性が高いです。
(ここでいう重さとは学会や学術論文を狙えるかどうかの意味です)
就職活動で半年くらいしか研究ができない学生と少なくとも2年以上は研究ができる学生、指導教授はどちらの学生に重さのある研究テーマを与えたいでしょうか?
最初から大学院に進学する方を優遇するのは当然な流れになります。
最初から大学院に進学することを希望する学生に学会参加や論文を意識しているテーマが与えられることになります。
そのため、多くの大学院生は就職活動前に国内での学会発表を経験していることが多く、就活で目に見える研究成果としてアピールすることが出来ます。
(学会のプログラム検索でネット上に残ります)
「問題解決能力」や「主体性」など、研究成果を軸に企業側に説得力のあるアピールが可能です。
逆に、内定が無いから大学院に進学する方は、研究量の不足や研究テーマの問題から目に見える研究成果が得られにくい状況になり不利になります。
(成果が無いとどうしても説得力が無くなります)
少し大げさに言うと、大学院生なのに学部4年生と同じレベルでしか就職活動の場でアピールすることが出来なくなります
1.2 就活の時期から、実は研究に使える時間はそんなにない
現在の就職活動のスケジュールから、修士課程に進学しても1年もたたず次の就職活動が始まります。
結局、1年くらいしか研究に向き合う時間は無く、就職活動の準備等を考えると実質1年も無いかもしれません。
また、就職活動に失敗した原因の分析や改善もこの1年間にする必要があり、正直かなり大変なスケジュールになります。
研究も就職活動も結局中途半端になる可能性が非常に高くなります。
1.3 ネガティブな進学理由で周りから嫌われる
就職活動とは話しが違いますが、「内定が無いから大学院に行く」というのは周りから嫌われます。
特に、理系の場合は「大学院へ進学する」ことが当然の風潮があり、変に意識が高い人が多いです。
就職活動を行う大学4年生を心の中では良く思っていない場合が多々あります。
「就活を言い訳に研究サボっている」といった具合です。
大学院生の変な高い自意識やプライドによるものだと思いますが、実際にそんな空気があることも確かです。
そのため、そんな空気の中で研究を進めることはとても気まずいし、あなた自身がその場に居ずらいかもしれません。
2. 就活に失敗した根本的な原因が解決していない
コロナの影響で就職状況が悪くなっているのは確かです。
2020年10月時点での内定率は69.8%と前年年の同時期と比べて7ポイントも低くなっています。
(リーマンショックの影響を受けた2010年の内定率は57.6%、2009年の秋から急に就職状況が悪化し始めていました)
参考記事:大学生内定率 新型コロナ影響で69% 70%下回るのは2015年以来 | 新型コロナウイルス | NHKニュース
来年以降、この数字がどうなるかは分かりませんが、2020年10月時点に限っては約7割の方が内定を貰っているという事です。
就職状況が悪化したのは不運なことですが、内定を貰えなかったのはあなた自身にも原因があります。
時代のせいにして大学院に進学しても、就職活動が上手く行かなった原因を解決することにはなりません。
ただの問題の先送りにすぎず、原因を改善しないと2度目の就職活動でも同じことを繰り返すことになります。
2.1 大学院生活が思いのほか忙しく、原因の究明・解決する時間がない
大学院に通っても授業や研究生活で忙しく、就活に失敗した原因を考えたり解決する時間が思いのほかありません。
研究室特有の「大学院生なんだから夜遅くまで、土日休みなく研究しないといけない」という謎の空気にのまれ、嫌々研究をしている可能性もあります。
元々、大学院で研究したい訳では無いので、慣れない研究生活が嫌で余計に疲れると思います。
そんな状況の中、次の就職活動のための準備が出来ないのが容易に想像できます。
2.2 時代のせいにしがちだが、それでは何も解決しない
コロナの影響で就職状況が悪化したのは間違いないです。
ただ、時代のせいにばかりにしていても何も始まりません。
私はリーマンショックによる就職状況が悪化した世代ですが、そんな中でも内定を貰っている人は周りに何人もいました
(私は大学院で研究する予定のため、就活はしていませんでしたが・・・)
内定率が50%でも70%でも、どんな数字でも勝ち抜く必要があります。
時代が良くなることをただ待っている人に企業は内定を出すでしょうか?
もちろん時代が悪い部分は当然ありますが、何かのせいにしていても前に進みません。
2.3 「新卒」が万能でないことは あなたが一番知っている
日本の就職事情により、既卒よりは新卒の方が就職活動が有利なのは間違いありません。
ただ、あなたは新卒が万能でないことはすでに知っています。
新卒だからといって内定が貰える訳ではありません。
新卒のために大学院に進学しても、就活を失敗した要因を分析・改善しないと2度目の就活でも再び内定が無い状態になります。
再度新卒を維持するために博士課程に進学し始めたら、もうそこは地獄の入り口です。
地獄の入り口に入ってしまっては、救えるものも救えなくなります)
2.4 有名大学の大学院出身でも内定が無かった高校の同級生の話
私の高校の同級生は勉強は出来たのですが、コミュニケーションを取ることがすごい苦手で会話もままならない状態でした。
そんな同級生は、旧帝大の有名大学に進学して大学院まで進学しました。
ただ、超高学歴にも関わらず就職活動が上手くいかず内定を貰うことが出来ませんでした。
コミュニケーション力が弱い状態が原因だったと本人も認識していたようです。
そんな同級生が次にしたことは、コミュニケーション力が無くても就職できる(と判断して)医者を目指しましたが、現在どうなっているかは分かりません。
内定を貰えない原因を解決しないと、結局何も前に進まないと思います。
3. 就職状況が良くなっている保証はない
時代が悪いという理由で大学院に進学しても、次の就職活動で就職状況が改善している保証はどこにもありません。
まして、次の就職活動までたった1年しか猶予が無いわけです。
反対に就職状況が悪化している場合もあります。
そんな状況の中、大学院へ進学して2年間の学費を払う価値はあるのでしょうか?
私は正直無いと思います。新卒だからといって就職出来る訳が無いことは、あなたが良く知っています。
3.1 大学院進学で失敗したリーマン世代の悲劇
この話は研究室の先輩の話です。
先輩が大学4年時の時はイケイケの売り手市場。複数の会社から内定を貰ったにも関わらず、なぜか大学院へ進学しました。
2010年で大学院を卒業する先輩は、もろにリーマンショックの影響を受けて内定ゼロ。
最終的に派遣会社に登録して工場で働きはじめ、現在何をしているかはわかりません。
この例は極端ですが、大学院に進学したからといって(たった1年の間に)状況が良くなる保証は全くありません。
3.2 私の同級生も大学院でも内定がもらえなかった
私が在籍していた研究室の同級生は大学4年(2009年卒の就活)で内定を貰えず、新卒の権利を維持するために大学院に進学しました。
ただ、元々大学院に進学予定では無かったので大学4年時に研究を全然していませんでした。
本人も研究が好きでなかったためか、研究室の空気になじめず、しだいにアパートに引きこもるようになりました。
結果、大学院での就活で内定ゼロだっただけでなく、授業の単位を落として大学院を留年することになるオマケつきです。
その後、同級生がどうなったかは誰も知りません。
「研究をしたい」という人以外は大学院進学は辞めた方がいい例です。
3.3 就職状況が良くても内定があるとは限らない
就職状況が悪化し、ついつい内定が貰えないのは時代のせいにしがちです。
ただ、就職状況が良い時代なら、あなたは内定を貰えているのでしょうか?
たしかに、2020年10月時点での内定率は69.8%と前年年の同時期と比べて7%も下がっています。
逆に言えば、たった7%の差しかありません。
もしかしたら、あなたは就職状況が良くても内定が貰えなかった人かもしれません。
(良くて当落線上にいる人で時代に一番左右される人かもしれません)
時代のせいにして大学院に進学しても何一つ問題は解決しません。
ただの問題の先送りにすぎないからです。
4. 大学院へ行っても就活に有利にはならない
大学院に進学したからといって、就活に有利になる要素は一つもありません。
指導教授から大学院へ進学したら強力なコネで推薦してもらえるなら別ですが、そんな特別な事情でもない限り、大学院での授業や研究が直接就活に役立つ訳ではないです。
「大学院に進学したら専門知識を生かして就職が有利になる」という話もあります。
大学院生が有利か不利かの問題は、企業によるところが大きいと思います。
参考記事:大学院進学か? 理系の学部卒就職か? - 就活準備 - マイナビ2022
ただ、有利になるパターンで本当に有利になるのは、最初から大学院を志望して大学4年生の時からしっかりと研究をしている大学院生に限ります。
内定が無いという理由で大学院を進学した方は、大学4年時に研究を十分に出来ていないため、専門知識や研究活動で同期と比べて明らかに劣っています。
そのため、他の大学院生の方と比べてどうしても劣ってしまう部分があり、大学院に進学したからといって有利どころか逆に不利になるケースが出てきます。
4.1 修士課程ということでハードルが上がることも
企業によっては学部生と大学院生で給料が違うことがあります。
大学院生のほうが初任給が高いケースです。
企業さんからしたら「大学院生の方に入社してほしい」という思いもある中、初任給が学部生より高い分、求められるハードルがその分高くなります。
研究活動を精力的に行い、学会発表や専門知識がある方はこれらのハードルをクリアすることは可能です。
しかし、内定が無いという理由で大学院に進学した場合、このハードルをクリアすることが難しくなります。
その理由は繰り返しになりますが、研究不足や意欲が無い状態で大学院に進学していることが原因です。
4.2 結局、「新卒」の権利しか手に入らない
研究に対する意識が低いまま 大学院に進学しても、得られるのは「新卒」の権利だけです。
研究室に通ったからといって、「コミュニケーション力」や「主体性」といった就職活動に有利になるスキルが手に入るわけではありません。
そもそも「内定が無いから大学院」というネガティブな動機では、(主体性がそもそも無く)大学院では何も得られないかもしれません。
5.自分が変わらなければ次の就活も上手くいかない
内定がゼロの原因を改善しないと次の就職活動では上手く行きません。
時代のせいにするのは簡単ですが、そんな時代の中でも内定を貰えている同級生がいることも事実です。
原因を考え、そこを改善していかないと同じ事を繰り返すだけです。
まれに全然就職活動をしてこなかった人が「新卒」ほしさに大学院に進学する場合があります。
この人の原因は就活をしなかったことであり、大学院に通ったからといってそのサボり癖が治るわけではありません。
私が院生の時もこういう後輩がいましたが、その後就職出来ずに今何しているかはわかりません。
5.1 自分が変わるための環境は大学院にはない
大学院は研究をするところであり、研究に忙しい日々を送ることになります。
そのため、自分をかえるための自己成長の場としては向いていません。
授業や研究、TAと何かと忙しく次の就活まであっという間に時間が過ぎていきます。
研究室によっては、土日休みなく研究を強要される所や雰囲気があります。
むしろ、就職浪人をした方が過去の自分と向き合うための時間がたくさん取れます。
(正直、22歳と23歳で会社からしたら年齢面では何も変わらないと思いますが・・・)
5.2 「新卒」という現状維持のために大金を払う価値はあるのか?
日本の就職事情では、既卒よりも新卒が有利と言われています。
ただ、最近では卒業してから3年以内は新卒扱いになる企業も増えてきました。
なにより研究目的以外の大学院進学からは何も得られるものはありません。
嫌々研究をしていても良いことはありません。
既卒者でも正社員への就職は可能です。
私も27の年齢でも新卒として内定を2社から貰うことが出来ました。
また、研究室の後輩も就職浪人をして既卒で内定を貰っていました。
(リーマンショックと東北地震の影響で就職状況が悪化した2011年の春の話です)
新卒ではないからといって正社員への就職が出来ないということは無いです。
新卒を維持するためだけに大学院へ進学することはお金の無駄以外ありません。
研究目的ではない大学進学は、はっきりお金の無駄
大学院への進学自体は無駄ではありません。
意欲的に研究に取り組むことで、得られることもたくさんあると思います。
しかし、研究目的以外での大学院進学は、はっきり言ってお金の無駄です。
研究室の「研究をしなくてはいけない」という空気が、あなたにとって重荷になり辛くなるばかりです。
大学院は研究をするところなので、新卒の権利を維持するために行くのはおススメできません。
リーマンショックで就職状況が落ち込んだ時、2年間学費を払って大学院に進学しても結局内定を貰えなかったという人が私の大学でも何人かいました。
結局、内定を貰えなかった原因を解決しないと次に行くことはできません。
大学院はその原因を解決場ではありません。
まとめ:あなたが行くべき場所は大学院ではなく、就職課だ
この記事では、内定が無いという理由で大学院に進学しても就活が上手く行かない理由を解説しました。
大学院進学で新卒という権利は維持できますが、研究室には次の就職が成功する要素は存在しません。
コロナでの就職状況の悪化で大変な時期ですが、新卒を維持するために大学院へ進学しても何も解決しません。
あなたが行くべき場所は大学院ではなく、就職課です。
内定がゼロだった原因をまずは突き止め改善する必要があります。
(大学院ではその原因を改善する場ではありません)
客観的なアドバイスを貰うために、一人で悩まずに就職課で第3者に相談するのがおススメです。
就職課に行くのが気まずい方は、プロの就職アドバイザーに相談することがおススメです。
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私も27歳の時に利用して内定につなげることができました。
(バカにされることも無く、メチャクチャ紳士的な対応をしてくれて勇気が湧きました)