この記事では日本学生支援機構の貸与型奨学金の繰り上げ返済のデメリットについて紹介していきます。
奨学金の繰り上げ返済をご存知でしょうか?
毎月決められた額を返済していると思いますが、実は前倒しで通常より多めに返済額を支払うことが出来ます。
最近では奨学金の自己破産やブラックリスト化、婚約を断られるなど、奨学金に関わる様々な問題を聞くようになりました。
そのため、「返済可能なうちに早めに返済しておきたい」という心理状態になっていることだと思います。
しかし、奨学金の繰り上げ返済は「早く返済できて一安心」という良い面だけでなく、次の2つのデメリットがあります。
- 万が一のことがあった時に対応できない
- 若い時に自分のためにお金が使えない
この記事では上記の奨学金の繰り上げ返済のデメリットを詳しく解説いていきます。
執筆者
ファイナンシャルプランナー2級。毎月数冊のお金に関する本を読み、日々お金に関する知識を勉強しています。
1.奨学金返済の一番のリスク
奨学金返済を進めていく上で一番のリスクは、滞納することでブラックリストに載ること。
日本学生支援機構は返済を3ヶ月以上滞納した人は原則ブラックリストに載り、クレジットカードや車・住宅のローンの審査が通らなくなると言われています。
さらに一度ブラックリストに載ってしまうと、返済完了後5年まで登録情報が残ります。
【参照先】
個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録 | JASSO
これに加えて、奨学金返済を滞納してしまうと年率3%の延滞金が発生します。
これではますます返済が苦しくなるという悪循環に陥ってしまい、奨学金による自己破産につながってしまいます。
【参照先】
奨学金返済にはブラックリストと延滞金というリスクがつきものです。
そのため、自身に何か起こる前に奨学金を早めに返済するために、繰り上げ返済を検討する人は多いと思います。
また、利子付きの第2種奨学金では返済期間が長ければ長いほど余計に返済額が増えていきます。
そのため、繰り上げ返済で早く完済すればするほど余計な利息が減り、返済総額が少なく済みます。
しかし、奨学金の繰り上げ返済は良い事ばかりではなくデメリットがあるので注意が必要です。
(次章で詳しく解説していきます)
2.奨学金の繰り上げ返済の2つのデメリット
奨学金の繰り上げ返済を検討している方は、次の2つのデメリットを知る必要があります。
- 万が一のことがあった時に対応できない
- 若い時に自分のためにお金が使えない
それぞれ詳しく解説していきます。
①万が一のことがあった時に対応できない
繰り上げ返済を検討する人の心理の一つとして、「何か起きる前に返済できるうちに返済したい」という気持ちがあると思います。
しかし、奨学金を繰り上げ返済した後に本当に何か起きてしまった場合、手元にまとまったお金がないため対応することが出来なくなってしまいます。
例えば、貯金が100万円しかないのに100万円を繰り上げ返済に使ってしまうと、その後に病気で仕事を辞めたり、会社が倒産したりした場合に一文無しで対応しなければなりません。
メチャクチャ貯金があれば別ですが、そうでない場合は繰り上げ返済よりも貯金に回した方が万が一の時に安心なのは間違いありません。
また、完済ではない中途半端な繰り上げ返済はおススメ出来ません。
貯金がない状態で不幸なことが起きてしまうと、返済が滞り1章で述べたブラックリストや延滞金の沼にハマってしまう可能性が高くなるからです。
奨学金の沼にハマらないための繰り上げ返済なのに、これでは何のために繰り上げ返済しているのか意味が分かりません。
仮に何か起きてしまっても、手元で100万円あれば当分の間は奨学金の返済には困りません。
結論として、繰り上げ返済をする場合は、次の2つの条件を満たない場合以外は行わない方が良いです。
- 奨学金を完済できること
- 返済後も十分な貯えがあること
②若い時に自分のためにお金を使えない
同じ1万円でも若い時と年寄ではお金の価値は違ってきます。
当然、若い時の1万円の方が価値ははるかに高いです。
例えば1万円分のビジネス書を読んだ時、60歳の定年間近なオッサンよりも25歳の若者の方が本で得た知識を長く活用することが出来ます。
小学生の時の1万と今の1万は明らかに価値が違うと思います。
そのため、せっかくの今あるお金を奨学金の繰り上げ返済に使うのは、若い時に使えるお金を放棄することとなり非常にもったいない考え方です。
そもそもの大前提として、奨学金を利用してまでなぜ大学に通ったか思い出してください。
若い時に大学で学んでその後の人生を豊かにするためではないでしょうか?
高卒で働きながらお金を貯めて大学に通ってもいいはずです。
それをしないのは、30歳よりも18歳で大学に通った方が長い期間今後の人生に活かすことが出来るからです。
そのため、せっかくの若い時に使えるお金を奨学金の繰り上げ返済に使うのは非常にもったいないです。
繰り上げ返済に使う前に、そのお金で別のことが出来ないか考えてみてはどうでしょうか?
よく言われるのは自己投資に使ってスキルアップすることで収入アップさせることです。
手元にある10万円を繰り上げ返済に使うのか、書籍やスクールに通って収入を月1万円増やしていくのか。
(一度給料が上がれば何年も恩栄を受けれます)
奨学金返済もメチャクチャ大事ですが、それと同様に若い時に使えるお金もメチャクチャ価値が高いです。
3.ケース別の返済に対する考え方
奨学金の繰り上げ返済について、第1種奨学金と第2種奨学金の2つのケースについて考えていきます。
①第1種奨学金
第1種奨学金は無利子なため、繰り上げ返済をしようがしまいが返済額の総額は変わりません。
そのため、貯金が十分ある場合は別ですが、そうでない場合はワザワザ繰り上げ返済をする必要がありません。
将来的な不安に備え、繰り上げ返済分を貯蓄に回す方が万が一が起きたときに対応することが出来ます。
②第2種奨学金
第2種奨学金は利子がついていますので、この利子で本来の借りた額よりも増えたお金を少なくしたいかどうかの考え方しだいになります。
第2種奨学金の利率は奨学金貸与終了時に決まり、上限3%が決められているものの、近年では0.5%未満が多くかなり低金利です。
(昔と比べて金利がかなり低い状態です)
【参考記事】コチラの記事が参考になります
奨学金の利息はどのくらいかかる?貸与利率が下がっているって本当? | ファイナンシャルフィールド
人それぞれ利息は異なりますが、重要なことは通常の返済期間でどのくらい余分に返済する必要があるのかを知る事です。
その上で、繰り上げ返済した方が得なのか、はたまた繰り上げ返済しようとしているお金を元に利息分よりも得する方法はないか?を判断することが大切です。
例えば、第2種奨学金を毎月10万円×4年間の計480万円借りていた場合、仮に利率が0.5%と仮定すると返済総額は20年で約506万円返済する必要があります。
(最近の利率は0.5%よりはるかに低いです)
そのため、この条件では20年間で26万円(1年で1万3千円)を余計に払う必要があり、それが不満なら繰り上げ返済で利息分を少なくすることを検討することになります。
この時、2章で述べたようデメリットがありますので繰り上げ返済は慎重に検討すべきです。
【参照先】こちらで奨学金返還のシミュレーションが出来ます。
また、仮に奨学金返済初めて5年目で100万円貯まったから繰り上げ返済しようと検討したくなる気持ちも分かりますが、次のような使い方も選択肢として考えることが出来ます。
100万円を年利3%で運用することが出来れば、年100万円×3% ×10年=30万円 と利息以上に稼げる可能性と投資のスキル・知識が身に付きます。
また、仕事上必要な資格・スキルを若い時に取得することで、将来的に大きく収入アップが出来るかもしれません。
(単純に資格手当5000円アップでも5000円×12ヶ月×10年=60万円収入アップします)
私個人としては低金利の奨学金はかなり優良なローンだと思っています。
わざわざい繰り上げ返済まではしなくていいんじゃないかな?と考えていますが、あとはあなたの考え方しだいです。
4.まとめ
この記事では、日本学生支援機構の奨学金を繰り上げ返済するデメリットを紹介しました。
「奨学金を早く返済し終わりたい」という気持はわかりますが、繰り上げ返済に実は大きなメリットがありません。
- 万が一のことがあった時に対応できない
- 若い時に自分のためにお金が使えない
繰り上げ返済には上記のようなデメリットがあるので注意が必要です。
貯金がメチャクチャあるなど、お金に相当余裕がある場合以外は繰り上げ返済はおススメできません。