ニュースでたびたび取り上げられる「奨学金返済で生活困窮」という奨学金問題。
「奨学金の返済はきつい」とよく聞くが、いったい何がそんなにきついのか?という部分は良く知られていない。
この記事では、何がどうして・どうなって奨学金の返済がきつくなるのか?に焦点を当てています。
1つの結論として、新卒社会人の給料と生活費がほぼ同じのため生活全体がカツカツになる可能性が高いからです。
この記事を読むことで、学校で教えてくれない「なぜ奨学金返済がきついのか?」の理由と対策を知ることができます。
1. 奨学金返済の現状
日本の奨学金で一番有名な日本学生支援機構の貸与型奨学金。
その日本学生支援機構の奨学金の返還が出来ない延滞者が、平成30年度で実は15.6万人もいます。
(ここでいう延滞者は返還を3ヶ月以上延滞しブラックリスト入りするひとです)
もちろん1回も延滞していない人の方が圧倒的に多く、延滞者の割合は全体の4%ほどです。
参考資料
平成30年度奨学金の返還者に関する属性調査結果 - JASSO
たびたびニュースで話題になる「奨学金が返せなくて貧困、自己破産」というニュースは圧倒的に少数側の話になります。
圧倒的大多数の方はしっかり奨学金を返済しているのが現状です。
ただ、奨学金の返済に関しては約4割の方が返済が苦しいというアンケート結果があるのも事実です。
(労働者福祉中央協議会の「奨学金や教育負担に関するアンケート調査」2019年3月より)
参考資料
「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」並びに「奨学金に関する一斉相談」の結果(概要版) | 労働者福祉中央協議会(中央労福協)
奨学金返済の現状として、多くの人が苦しみながら何とか返還しているというのが現状ではないでしょうか。
「なぜ、多くの人が借りる奨学金返済がキツイのか?」ということを以下の項目で解説していきます。
2. 奨学金の返済額
「奨学金をいくら借りたら、毎月いくら返還するのか?」 借りる前に、あなたが返還する額を把握することは大切です。
実際にあなたの返済額はコチラのサイトから簡単に計算することができます。
2019年3月に実施された労働者福祉中央協議会の「奨学金や教育負担に関するアンケート調査」によると、毎月の返済額の平均が1万6880円になります。
参考資料
「奨学金や教育費負担に関するアンケート調査」並びに「奨学金に関する一斉相談」の結果(概要版) | 労働者福祉中央協議会(中央労福協)
もちろん奨学金の借りる額は家庭の状況、国公立・私立、自宅・自宅外など様々な環境で変わってきます。
平均を比べる事は意味のないことだと思います。大切な事は、いくら借りて社会人になったら毎月いくら返すのか?です。
そして、その返還額が本当に返せそうなのか?をイメージすること。
そのために、奨学金の返済額を確認するだけでなく、社会人になった時の給料のことを一緒に理解する必要があります。
(返済額だけ見ても よくわかりませんよね)
参考資料:奨学金の制度は日本学生支援機構のHPから
3. 社会人の給与事情
大学1年時の奨学金を借りる時点で、社会人の給料を意識している人はいないと思います。
毎月の返済額が分かったとしても正直きついかどうか分かりませんよね?
社会人で実際にいくら給与を貰えるのか?を考えないと、奨学金の返済がキツイ理由が見えてきません。
厚生労働省のアンケートによると、大学卒業者の初任給の平均は21万円です。
参考資料
この給料は額面といい、この給料から年金等の社会保険料が引かれて、実際にあなたの手元に届く手取りの給料は、およそ額面の約8割と言われています。
そのため、平均給料21万円×0.80%= 16.8万円があなたの手元に届く手取りの給料になります。
ちなみに社会保険料の中で住民税は、2年目以降から引かれるので手取り額が1年目より少なくなるパターンがあるので要注意です。
詳しい給料の手取りについては下記の記事が分かりやすくて参考になります。
参考記事
誰でもわかる給料の手取り計算方法&平均給与の実態|転職Hacks
3.1 1人暮らし平均的な支出
あなたの元に届く手取り額は約16.8万円です。次に、1人暮らしの人の平均的な支出がどれくらいか見ていきます。
総務省による「家計調査(家計収支編)令和元年 (2019年)」の調査結果によると、以下のような計16万3781円の支出額になるそうです。
- 飲食費:40,331円
- 住居費:20,847円 (寮・社宅・実家暮らし含む)
- 光熱費:11,653円
- 家具・家事用品:5,308円
- 服:5,720円
- 保険医療:7,666円
- 交通費:14,195円
- 通信費:6,793円 (スマホやネット)
- 教育費:19円
- 教養娯楽費:18,746円
- その他:32,503円
- 計163,781円
参考記事:平均支出額が分かりやすいくまとまっています
一般的な生活費の内訳は? 家族構成別に見る一ヵ月の支出と家計の見直し方 | ナビナビ保険
新卒の平均手取り額である16.8万円にたいして、1人暮らしの平均支出額が16.4千円になります。
注目すべき点は住居費の2万円です。普通にアパートを借りたら2万円の物件なんてほとんどありません。
会社選びの1つのポイントとして、住居費用を安くする福利厚生(寮や住宅手当)がある会社を選ばないと、平均支出額を大きく上回ることになります。
スマホ等の通信費もこれ以上かかる人は多いと思います。
そして、奨学金の平均返済額は1万6880円になり、支出のその他の32,503円にあてはまります。
この結果を見ると、生活に余裕が無いことが分かると思います。
ここまで見て初めて、奨学金の返済がきつそうだと感じることが出来ると思います。
3.2 給料は大きく上がらない
次に気になるのは、「給料が年々どれくらい上がるのか」ではないでしょうか。
下記の記事によると、2019年度の平均昇給額は約6千円です。
参考記事
【2019年版】企業の昇給額の平均は5,997円!企業規模別の差も解説|転職Hacks
毎年順調に6千円ずつ昇給しても5年間で3万円です。この昇給額にも税金がかかるので、手取りはこれより少なくなることになります。
そのため、かつかつな生活が一気に楽になることは中々ありません。
4. だから奨学金の返済がキツイ
「2.奨学金の返済額」と「3.社会人の給与事情」を合わせて考えると、奨学金の返済がきつい理由が見えてきます。
社会人の給料に対して1人暮らしの支出がほぼ同じで生活自体がギリギリ。
奨学金の返済がきついと感じるのはこのためです。
もちろん、これまで見てきた数字はあくまで平均値です。
奨学金の借りる額が平均より多い場合や、給料が平均より少ない場合も多々あります。
出来る限り返還する額が少なるなるように努力することが非常に大切です。
5. きつい奨学金返済を和らげる方法
きつい奨学金返済への対処法として、高校から社会人までの各段階で取り組めることをまとめてみました。
5.1 高校生の時に意識できること
奨学金返済のために高校生の時から意識できることは以下の4点あります。
- 塾などの教育費の見直し
- 給付型奨学金を意識
- 学費が安い国公立を意識
- 奨学金の制度を理解
将来借りるであろう奨学金制度を理解して、なぜ多くの大人が奨学金返済に苦しむのか?を考えることが大切です。
その上で「奨学金を借りてでも行きたい」後悔しない進路選びが大切だと思います。
進路選びの一つに、奨学金返済額を少なくするために学費が安い国公立や給付型奨学金が狙える大学を検討してみてはどうでしょうか?
下記の記事のように、私立大学でも学費相当の給付型奨学金制度がある大学は意外とあります。
参考記事
【神奈川大学・給費生試験】給費生OBの私が伝える給費生試験に合格するための方法:満点取りに行く覚悟が必要 - 平太の雑談ブログ
また、受験対策として通う塾は非常に高い場合があります。
現在は、通信講座やオンライン講義など塾より安くてクオリティが高い教材がたくさんあります。
塾などの教育費を一度見直してみて、安くなった分を将来の大学の学費に当ててみることは非常に効果的です。
参考記事
【大学受験】学習塾はもう古い!!お家で塾よりも安く効果の高い勉強コンテンツを紹介!! 「参考書」「通信教育」「オンライン講座」 - 平太の雑談ブログ
5.2 大学生の時に意識できること
奨学金返済のために大学生の時に意識できることは以下の3点あります。
- 学内の給付型奨学金を積極的に狙う
- 社会人生活に関わるお金のことについて学ぶ (特に保険)
- 必要以上に借りないこと
将来の奨学金返済を少なくするために、まずは奨学金を必要以上に借りないことです。
将来あなたが困ることになるので、必要最低限の奨学金だけ借りるようにしましょう。
(後々増額や減額はできます)
その上で学内の給付型奨学金に積極的に応募して、学生生活を楽にしたり、将来の奨学金返済にあてていきましょう。
私が在籍していた大学にも様々な給付型奨学金がありました。大学の成績を良くするモチベーションにもなるのでおススメです。
また、社会人への準備として「お金について学ぶ」ことが非常に大切になります。
奨学金を含めて、学生時代にお金について学ぶ機会は全くありません。
特に「保険」に関しては、会社に入社する前に保険が必要かどうかは決めておいたほうが良いです。
なぜなら、会社に保険のセールスが頻繁に出入りして必要以上に高い保険を勧誘してくるからです。
(ハイエナのように営業してきます)
ただでさえ、奨学金返済で生活がきついのに必要以上の保険の負担が加わったら大変です。
保険に関しては下記の記事も参考にしてみてください。
参考記事
【社会人1年目】社会人になる前に保険の勉強だけはすべき理由 ~ おすすめ書籍も紹介 ~ - 平太の雑談ブログ
5.3 社会人で意識すべきこと
返済が始まっている社会人の方は、確実に奨学金を返すために下記の4点を意識すべきです。
- 家賃を簡単に上げない
- 残業代やボーナスを生活費に使わない
- 給料を上げる努力をする
- 払えなくなった時の正しい対処法を知る
奨学金の返済がキツイ理由は、新卒社会人の給与の手取り額と生活の支出がほぼ同じだからです。
そして給料の昇給額は平均で年6千円で、一気に給料が上がることはありません。
そのため、家賃を始め簡単に生活レベルを上げることはしてはいけません。
特に、残業代やボーナスは会社の業績によって一気にゼロになる場合もあります。
今はよくても未来はどうなるか分かりせん。残業やボーナスに頼った生活は本当におススメできません。
参考記事
【光速の貯金】サラリーマンは残業代を貯金にまわすべき3つの理由!! - 平太の雑談ブログ
また、最悪奨学金を払えなくなった場合は、しかるべき対処をしましょう。奨学金を延滞すると下記のような大変なことになります。
- 3ヶ月間の延滞でブラックリスト
- 延滞金が発生
- 9ヶ月以上の延滞で差し押さえ
参考記事
奨学金が払えないピンチの社会人が知っておくべき4つの対処法 | マネット カードローン比較
仮に何かの事情で奨学金が払えなくなったら、速攻で日本学生支援機構に連絡しましょう。
返済額を減らしてもらったり、返還を一定期間待ってもらえる場合があります。何もしないとより大変なことになります。
参考資料
6.まとめ
この記事では、世間でよく言われている「奨学金の返済がきつい理由」を解説しました。
その主な理由は新卒社会人の給料と生活支出がほぼ同じで、給料が大きく上がらないからです。
この記事では、あくまで平均的な数字を出しており、各家庭環境や就職状況によってこの値が上下します。
確かに奨学金返済はきつい部分があります。ただ、ほとんどの人はしっかり完済できていることも事実です。
ニュース等で変に不安にならず、奨学金制度を理解して対策を立てることがとても大切です。