この記事は「大学院の博士課程に進学しようか迷ってる方」に向けて書いています。
修士課程までとは違い、博士課程はとても厳しい世界で、簡単に進学を進めることが出来ません。
その理由の1つとして、卒業時の年齢が30近くなり、失敗したときのダメージが大きいからです。
私もかつて博士課程に在籍したことがあります。その時の自分の周りや、他大学の知り合いの状況から、「博士課程に進学を勧められない人の特徴」を記事中で解説していきます。
この記事が、あなたの後悔のない選択の助けになれば幸いです。
この記事の執筆者
私は過去に化学系の博士課程に在籍し、日本学術振興会DC2や査読付きの学術論文を5本採用された実績を持っています。私の博士課程までの経験をもとに、大学院に関する記事を随時発信しています。
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そもそも博士課程への進学が地獄と言われる理由
そもそも博士課程は地獄と聞くが、実際にどうヤバいのか?
同じ大学院の修士課程とどう違うのかを簡単にまとめました。
- 卒業後の年齢が30近い (社会人経験なし)
- 助手のポストが少なすぎる
- 卒業要件が厳しい
- 多額の奨学金の返済地獄
- 研究生活がハードで体を壊す etc...
博士課程で一番ネックなのが卒業後の年齢です。
高校からの全ての過程を順調に進んでも27歳。この年齢は大卒や修士卒の方の第2新卒の年齢になります。
そのため、30手前の社会人未経験者を採用したい企業は、研究開発など限られてきます。
その他、奨学金の返済地獄など上げだしたらキリがありません。
この辺りのことは、以下の記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてみてください。
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★ 博士課程に行かないほうが良い人の特徴
本題の博士課程への進学をオススメできない方の特徴を以下にまとめした。
- 論文を書く(卒業要件の)見通しが無い
- 指導教授との関係性が微妙
- 給付型の奨学金がもられていない (奨学金で通う)
- 就職が決まらないから
4つの項目それぞれについて詳細に解説していきます。
1.論文を書く(卒業要件の)見通しがまだ無い
頑張って研究に取り組めば卒業できる修士課程とは違い、博士課程の卒業要件はとても厳しく、査読付きの学術論文の提出が必須になってくる大学が多いと思います。
私の大学では、学術論文誌3本 (コミュニケーション2本、フルペーパ1本)でした。
他大学の知り合いの方はからは、学術論文の水準まで求められていると聞いたことがあります。
各大学で卒業要件は異なりますが、修士課程より厳しいのは明らかで、卒業要件を満たさないと本当に卒業することが出来ません(お情けはありません)。
博士課程の3年間はあっという間に過ぎていきます。学術論文の査読の期間を考慮すると、博士課程3年の前半には卒業要件を満たさないと卒業が厳しくなります。
そのため、修士課程卒業時には学術論文1本は書けるか、あと少しの追加データで書けそうという段階でないと、かなり厳しい状況になります(初めて学術論文を書く場合、思った以上に相当時間がかかります)。
学術論文を書くための研究成果が全くない、または博士課程卒業までに論文を出していく過程が(見通し)が見えてない方は、かなり危機的状況です。
特に、博士課程から違う大学の研究室に進学する方は、一から研究を始めるケースが多いのでかなり難易度が上がります。
内部進学・外部進学ともに「3年間で卒業できるのか?」は進学前にしっかり考えておくべき問題です。
2.指導教授との関係性が微妙
正直なところ、指導教授のコネは半端ないです。
企業への就職、助手への推薦、正直怖いほどスムーズにことが運びます。
私の大学でも、「全く研究能力が無い方が指導教授のゴリゴリのコネで国立大学の助手に採用」、「大手企業の研究開発に入社する」という光景を何度か見たことがあります。
指導教授との関係性が良ければ、こういったコネや良い研究テーマといった甘い汁が期待できます。
(良い研究テーマとは、結果が出やすかったり、質の良い論文に採用されそうなテーマ)
逆に指導教授に溺愛され、ゴリゴリのコネが期待できる方は博士課程に進学する価値はかなりあります。
反対に、指導教授との関係性が微妙だと、卒業後の進路だけでなく在籍中も上手く行かないことが多くなります。
良い研究テーマは貰えず、卒業後のサポートも期待できない可能性が非常に高いです。
いかにあなたが優秀でも教授に気にいられていなければ、この世界はおしまいです。
(こういう部分が博士課程がヤバイ理由の1つでもあります)
学会への参加、学術論文の投稿、ポスドク・助手の公募など、何をするにも教授の了承や推薦が必要です。
指導教授が「No-----!!!」と言えば、戦うことなく終わりです。
どんなに優秀でも、どんなにポテンシャルを秘めていてもです。
(こういう閉鎖的な環境なのが研究室の世界で問題視されています)
指導教授との関係性が微妙な場合は進学を考えなおした方が良いかもしれません。
残念なことに、それくらい今後に響く問題です。
3.給付型の奨学金がもらえていない(奨学金を借りて通う)
博士課程で有名な奨学金は、学振とよばれる日本学術振興会の奨学金。
その他にも大学独自の給付型奨学金、科研費での学費補助など様々な奨学金があります。
日本学生支援機構の奨学金免除制度も大学院生ならではの制度です。
これらに採用されずに、奨学金を借りて通う予定の方は博士課程への進学をおススメすることが出来ません。
特に修士課程でも奨学金を借り、(免除にならず) さらに博士課程でも奨学金を借りて通学することは本気で辞めた方がよいです。
その理由は、あなたは優秀では無く、加えて恵まれた環境にも居ないからです。
あなたが博士課程に進学するほど優秀な方なら、学振のDC1まではいかないまでも大学の給付型奨学金や修士課程分の奨学金の免除に選ばれているはずです。
同じ大学の同期に (実力以外のラッキーな環境も含め) 負けている時点で、博士課程に進学に向いていません。
ただでさえリスクのある博士課程にも関わらず、さらに莫大な奨学金という借金を背負って30歳近い年齢で社会に出ることは無謀としか言いようがありません。
それでも博士課程に進学したいのなら、最低限、奨学金という借金だけは無い状態で進学してください。
大学のポストを狙うなら、DC1が登竜門
大学のポストを狙うなら日本学術振興会のDC1に採用された方ではないと厳しいです。
DC1は修士課程2年の早い段階に申請書類を書いて応募し、その中で上位10%くらいの方が採用されます。
ここに採用されるという事は、
- 同級生の中でワンランク以上格上という事実
- 研究を初めてたった2年で研究成果が出せる抜群の研究環境の良さ
ということが言えます。注目すべき点は、本人の実力以上にDC1に合格出来る研究環境の良さではないでしょうか?
(ここでの研究環境は、研究設備だけでなく、指導教授を含めたスタッフ、研究テーマを含めています)
DC1の方は、博士課程在籍3年間を抜群の研究環境の良さ(ラッキーな部分もこみで)で、今以上に研究業績を伸ばしていき、ドンドン差が生まれてきます。
根本的な研究環境が違うので、努力量で何とか太刀打ちできるレベルではないと思います。
DC1に対してDC2は博士課程1年時以上の方が申請します。
DC2でもスゴイことですし、生活が助かることは間違いありません。ただ、結局は2軍の集まりにすぎません。
DC1という1軍メンバーがいない中で争い、その中で勝ち取れた称号です。
私も博士課程1年時にDC2に採用されましたが(DC1はA判定で不採用)、DC1の方と比べると業績が全然違います。
小中の同級生が同じ化学分野のDC1に採用されましたが、学会での賞や論文の質といった研究業績に天と地ほどの差がありました。
(私も大学の研究機関のポストを狙っていましたが、これは無理ゲーだなと思ったのも博士課程を3年目で諦めた理由の1つだったりします)
DC2でも教授のコネを使って助手のポストを狙いにいくことは可能です。
知り合いの先輩もそのルートで行きましたが、次のポストは厳しいようです。
学振のDC1に採用されるくらいではないと、その後のポスト争いは本当に厳しいと思います。
4.就職が決まらなかったから
就職難の時に起こるのが、大学院に行って新卒という称号を守る作戦。
これを博士課程でするのは、ただお金の無駄です。
修士課程で就職が決まらなかった人間が、博士課程に進学したかといって3年後に就職出来る保証は全くありません。
逆に修士課程で就職活動に取り組んでいた分、就職活動をしていない博士課程の学生比べて研究が進んでいません。
そんな状態で3年後の就職活動が上手くいくでしょうか?
そんなあなたが行く場所は博士課程ではなく、就職課ではないでしょうか?
博士課程の受験申請書を破り捨て、履歴書を持ち、いますぐ就職課や就職エージェントに相談しに行きましょう。
まとめ
この記事では「博士課程に行かない方が良い人の特徴」を解説してきました。
同じ大学院でも修士課程と比べ、博士課程はかなり厳しい世界です。
頑張っただけでは3年で卒業できる保証もなく、その後の進路の保証もない。
30手前で社会人経験ゼロの人間が、今の現代社会に適応できるのでしょうか?
人によっては、多額の奨学金の返済に追われるかもしれません。
夢を持つことは悪い事ではありませんが、厳しい世界ということだけは忘れないでください。
この記事が、あなたの後悔のない選択の助けになれば幸いです
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